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鍛造とは?鑄造との違いやメリット・デメリット、種類・製品例まで徹底紹介

鍛造とは?鑄造との違いやメリット・デメリット、種類・製品例まで徹底紹介

 

               

鍛造(たんぞう)とは、金属を加熱し、圧力をかけて形を変える古くからの加工技術です。この技法は、製品の強度と耐久性を高めることで知られており、自動車部品から航空宇宙、建設産業まで幅広い分野で活用されています。

この記事では、鍛造の基本原理種類などを解説します。また、鍛造(たんぞう)鑄造(ちゅうぞう)の加工技術との比較や、メリット・デメリットも紹介していますので、ぜひ、参考にしてください。

鍛造(たんぞう)とは?

鍛造とは、伝統的な金属加工技術の一つで、金属を打撃や圧力で変形させ希望する形状やサイズに加工します。金属が持つ天然の結晶構造を変化させ内部構造を改善し、強度や靭性を向上させることが可能です。

鍛造によって製造された部品は、高い強度と耐久性を持ち、厳しい使用条件下でも性能を発揮するため、自動車のエンジン部品、建設機械のコンポーネント、航空機の部品など、さまざまな産業で使用されています。

鍛造はどんな製品に使われている?

業界 部品例
自動車産業 エンジンのクランクシャフト、コネクティングロッド、ギア、車軸、ホイールハブ
建設機械・重工業 アーム、リンク、ギア、フランジ、ファスナー
宇宙高級産業 ランディングギア、エンジン部品、構造体のコンポーネント
スポーツ用品 ゴルフクラブのヘッド、バイクのフレーム

鍛造技術は、その強度と耐久性から多岐にわたる製品に使用されています。自動車産業では、エンジンのクランクシャフト、コネクティングロッド、ギア、車軸、ホイールハブなどの重要な部品に鍛造が用いられます。これらの部品は、高い強度と耐久性が求められるため、鍛造による製造が理想的です。

建設機械重工業では、鍛造はアーム、リンク、ギア、フランジ、ファスナーなど、荷重がかかる部品の製造に使われます。また、航空宇宙産業では、ランディングギア、エンジン部品、構造体のコンポーネントなどに鍛造が利用され、極端な環境下での信頼性が要求されます。

スポーツ用品では、ゴルフクラブのヘッドやバイクのフレームなど、高い強度と軽量性が求められる部品に鍛造が適用されます。また、農業機械の部品や手工具、さらには医療器具に至るまで、鍛造はその用途の広さを示しています。

鍛造と鋳造(ちゅうぞう)の違いは?

鍛造と鋳造は、金属を加工する二つの異なる方法で、それぞれ独特のプロセスを持っています。

加工法、強度、費用に関しての違いは下記のとおりです。

鍛造 鑄造
加工法 金属を打撃やプレスなど物理的に変化 融解した金属を型に流し込む
強度 材料密度が上がり、部品の強度と靭性を向上 内部に気泡や不純物が含まれることがあり、強度や靭性が劣る
費用 初期費用や運用コストが高い 特に大規模な生産で、コスト効率良い

詳細を解説していきます。

加工法の違い

鍛造(たんぞう)は、金属を打撃や圧力によって物理的に形状を変えるプロセスです。金属の結晶構造を変化させ内部構造を改善します。

一方で鋳造(ちゅうぞう)は、溶融した金属を型に流し込み、冷却・固化させることで形状を作り出します。金属を高温で溶かし、液体状態で成形型に流し込んで固めます。

そのため、複雑な形状や大きな部品の製造に適していますが、鍛造に比べると部品の微細な結晶構造や均一性に劣ることがあります。

強度の違い

鍛造と鋳造のもう一つの大きな違いは、最終製品の強度にあります。圧力を加えて金属を成形することで、材料内の空隙が少なくなり、より均一で強靭な部品が得られます。

対照的に、鋳造は溶融金属を型に流し込み固化させる方法で、鍛造ほどの強度を持ちません。鋳造部品は、内部に気泡や不純物が含まれることがあり、これが部品の強度に影響を及ぼすことがあります。また、鋳造では金属の結晶構造が細かく制御されないため、鍛造に比べて強度や靭性が劣る傾向にあります。

費用の違い

鍛造と鋳造の間には、費用面にも顕著な違いがあります。鍛造は、高度な技術や専門的な設備を必要とし、特に金型の製造やメンテナンスに関連するコストが高くなる傾向があります。強度と品質の面で優れていますが、初期投資と運用コストが鋳造よりも高くなりがちです。

一方、鋳造は比較的低コストで行うことができ、特に大規模な生産においてコスト効率が良いです。鋳造では、複雑な形状の部品も一つの型で簡単に製造できるため、金型製作のコストが低減されます。

このため、製品の要求仕様と生産規模に基づいて、鍛造と鋳造のどちらの方法が最もコスト効率の良い選択であるかを検討する必要があります。大量生産で複雑な形状が求められる場合は鋳造が、高強度と品質が求められる場合は鍛造が適していることが多いです。

鍛造と鋳造それぞれのメリット・デメリット!選ぶべき基準は?

メリット・デメリット

鍛造 鑄造
メリット 強度が高い 複雑な形状の製造
耐久性が高い 低コスト
精密な整形が可能 大量生産に適している
デメリット コストが高い 強度の制限
サイズ制限あり 内部欠陥のリスク

鍛造はその技術で金属の結晶構造を改善し、材料の強度と靭性を高めるため、製造された部品は高い耐久性を誇り、厳しい使用環境下でも一貫した性能を維持します。また、精密な成形が可能であり、複雑な形状の部品製造に特に適しています。

鍛造には専門的な技術と設備が必要であり、特に金型の製造やメンテナンスには高いコストがかかります。また、主に小規模から中規模の部品製造に適しており、大型部品の製造は難しいという制約があります。

一方、鋳造はその柔軟性で複雑なデザインや大規模な部品を効率よく製造することが可能で、金型製作や生産プロセスのコストも比較的低く抑えられます。

大量生産にも適していますが、鍛造部品に比べて強度や靭性が劣る場合があり、鋳造プロセス中に気泡や不純物が混入するリスクがあり、製品の品質に影響を与える可能性があります。

選択の基準は「製造コスト」「生産規模」を総合的に判断

鍛造と鋳造の選択基準は、製造する製品の特性と要求される機能に大きく依存します。強度と耐久性が最優先される場合、例えば高い荷重がかかる自動車の部品建設機械のコンポーネントには、鍛造が適しています。

一方で、複雑な形状や大規模な部品、特に装飾的な要素や精密でない機能部品を製造する場合、鋳造が選ばれることが多いです。鋳造は形状の自由度が高く、大量生産にも適しており、コスト効率が良い点がメリットです。

したがって、製品の用途必要な物理的特性製造コスト生産規模などを総合的に考慮し、最適な製造方法を選択することが重要です。各プロセスの特性を理解し、製品要求に最も適合する方法を選ぶことが、品質とコスト効率の両方を最大化する鍵となります。

鍛造は「温度」「加工方法」によって分類されている

鍛造工程は、使用する温度と採用する加工方法によって多様に分類されます。冷間鍛造から熱間鍛造までの温度に基づく分類や、自由鍛造から型鍛造などの加工方法による区分について解説していきます。

温度による分類

冷間鍛造

冷間鍛造は、室温で金属材料を加工する方法です。加熱を必要とせず、金属の塑性変形を利用して部品の形状を変えます。冷間鍛造の主なメリットは、高い寸法精度と優れた表面仕上げです。また、金属の硬化が進むため、製品の強度と耐久性が向上します。

詳細は下記記事よりご確認いただけます。

■関連リンク:冷間鍛造

溶湯鍛造

溶湯鍛造は、金属材料を溶融状態に近い高温で加工する鍛造方法です。材料を融点直下まで加熱し、高温で変形させます。

溶湯鍛造の主な特徴は、金属の流動性が高くなる点にあり、複雑な形状や非常に細かいディテールのある部品の製造が可能になり、特に複雑な形状の大型部品に適しています。

溶湯鍛造は、特殊な用途や高い性能が求められる製品に用いられることが多く、航空宇宙、エネルギー産業などの分野での応用が見られます。

温間鍛造

温間鍛造は、金属を中間温度で加工する鍛造方法です。この温度範囲では、金属の塑性変形が容易になり、冷間鍛造に比べて必要な加工力が少なくなりますが、熱間鍛造ほど材料の流動性は高くありません。

温間鍛造のメリットは、冷間鍛造よりも加工しやすく、熱間鍛造よりも高い寸法精度と良好な表面品質を得られることにあります。

また、材料の内部ストレスが低減され、後の加工や仕上げがしやすくなるのも特徴です。自動車部品や機械部品など、一定の強度と精度が要求される製品に適しています。

熱間鍛造

熱間鍛造は、金属材料をその再結晶温度以上に加熱し、加工を行う鍛造方法です。材料の流動性が高くなるため、加工中の力が比較的少なくて済み、大規模な部品や複雑な形状の部品の製造に適しています。

熱間鍛造のメリットは、高い生産効率と広範なデザインの適用可能性です。一方で、高温での作業が必要なため、エネルギーコストがかかることがデメリットとして挙げられます。

加工方法による分類

自由鍛造

自由鍛造は、最も伝統的な鍛造方法の一つで、金型を使用せず、金属を直接打撃やプレスで成形する技術です。特定の設計に縛られることなく、多様な製品を小ロットで製造できるため、特注品や試作品の作成に適しています。

柔軟性のある自由鍛造ですがが、製造される製品の寸法精度や表面仕上げは、型を用いた鍛造方法に比べて劣る可能性があります。このため、最終的な製品には追加の加工が必要になることもあります。自由鍛造は、一般的な産業用途だけでなく、芸術品の製造にも使用されています。

型鍛造

型鍛造は、事前に製作された金型を使用して金属を成形する鍛造方法です。加熱された金属材料を型の間に挟み、プレスやハンマーで打撃を加えて形状を成形します。一貫した品質と形状の部品を大量に製造することが可能です。

型鍛造は、自動車のエンジン部品機械部品など、精密な寸法と高い強度が要求される製品に適しています。

金型の製造に初期コストがかかりますが、大量生産においてはそのコストを効率良く回収できるため、大規模な製造プロジェクトにおいても経済的な選択といっても良いでしょう。

密閉鍛造

密閉鍛造は、金属を完全に閉じ込めた型内で成形する高精度の鍛造方法です。加熱された金属材料を二つの型半分にはさみ、強い圧力をかけて成形します。高い寸法精度と複雑な形状の製品を製造できます。

また、密閉鍛造は材料の流出を防ぎ、材料の無駄を減らす効果があります。さらに、金型内部の高圧によって、金属の密度が高まり部品の強度と品質が向上します。自動車のギアや軸受けなどの精密部品航空宇宙コンポーネントなど、高い品質が要求される製品にも適しています。

閉塞鍛造

閉塞鍛造は、金属を型内で高圧下に置き、完全には閉じられていない型で成形する鍛造方法です。余分な金属が型の隙間から押し出されることがあり、過剰な材料を排出することで、製品の精度を高めるのに役立ちます。

閉塞鍛造は、密閉鍛造よりも型の製作が容易で、複雑な形状の部品の製造にも適用可能です。部品の内部に気泡や不純物が閉じ込められるリスクを低減し、強度と品質を向上させる効果があります。

自動車部品、機械部品、建設機械など、中程度の精度が要求される部品の製造にも適しています。

回転鍛造

回転鍛造は、金属材料を回転させながら圧力を加えて形状を成形する鍛造方法です。金属の棒やチューブを高速で回転させ、同時に圧力を適用することで、金属を希望する形に変形させます。

主なメリットは、均一な厚さの製品を効率的に製造できることと、軸対称の部品に適している点です。

特に、長さのある円筒形部品やリング状の部品の製造に適しており、ギアベアリングなどの製造に用いられます。

回転鍛造は、材料の均一な変形を可能にし、内部に欠陥が少ない部品を生産することができます。また、材料の無駄が少なく、生産効率が高いことも特徴です。

鍛造の工程

鍛造の工程は、原材料の準備から最終製品の完成まで、複数の段階を経て進行します。切断、加熱、形成、後処理、品質検査といった鍛造工程の各ステップを順を追って解説していきます。

切断

鍛造の最初のステップは「切断」。すなわち、金属材料を適切なサイズに切り分ける工程です。大きな金属塊や棒から必要な量の材料を正確に切り出します。

切断は通常、機械的な切断機、バンドソー、またはトーチを使用して行われ、鍛造の基礎となる材料の準備を整えます。

加熱

「加熱」の工程では、切断された金属材料を、鍛造に適した温度まで均等に加熱します。熱を加えることで、金属は塑性変形しやすくなり、後続の鍛造プロセスで必要な形状への成形が容易になります。

均一な加熱は、金属の内部ストレスを減少させ、材料の品質を保つ上で重要です。使用する金属の種類によって適切な加熱温度は異なり、熱処理は精密に制御されます。

加工

つづいて鍛造工程の「加工」です。適温で加熱された金属材料に圧力を適用し、所望の形状に変形させます。

加工は、ハンマー鍛造プレス鍛造、またはロール鍛造など、さまざまな方法で行われます。金属の流動性を考慮しながら、精度と品質を保つために、圧力の適用量や成形速度が慎重に制御されます。

後処理

鍛造工程の最終段階である「後処理」は、鍛造された部品の完成度を上げるためにも不可欠です。このステップには、余分なバリの取り除き熱処理表面の清掃、そして必要に応じて研磨塗装が含まれます。

熱処理は特に重要で、部品の硬度や靭性が調整され、製品の機械的特性が最適化されます。また、バリ取りや表面仕上げは、製品の外観と寸法精度を向上させる役割を果たします。

品質検査

鍛造プロセスの最後は「品質検査」です。寸法精度、強度、表面仕上げ、および内部の欠陥の有無など、さまざまな品質基準に対する検査をします。

場合によって、非破壊検査(NDT)技術、例えば超音波検査X線検査が、内部欠陥を検出するために用いられることもあります。また、寸法検査、硬度試験、および視覚検査が、製品の規格と要求に適合していることを確認するために実施されます。

鍛造の不具合と発生原因、その対策方法は?

バリ・サビなど外観が悪くなる

鍛造においてバリやサビが発生し外観が悪化する主な原因は、不適切な加工条件材料の管理不足です。

バリ対策としては、金型の正確なメンテナンス適切な圧力の適用が重要です。

サビの問題は、主に金属材料の保管環境や後処理の方法に起因します。金属が湿度の高い環境にさらされるとサビが発生しやすくなります。

この問題を防ぐためには、金属材料の適切な保管と、加工後の速やかな防錆処理が効果的です。また、加工後の清掃と乾燥適切な防錆コーティングの施工がサビの発生を防ぐ上で重要です。

割れ・キズがつく

鍛造過程での割れやキズの発生も起こり得ます。

割れは、材料が適切な温度に加熱されていないか、過度の圧力が加えられた場合に生じることがあります。材料が十分に柔らかくならずに強い力が加わると、内部にストレスが生じて割れが発生するのです。

対策としては、加熱の精度を高め、材料が均等に適切な温度に達するように調整することが重要です。

キズは、金型の不備や加工中の取り扱いミスによって発生することがあります。金型の表面に傷や不純物があると、それが製品に転写される可能性があります。

金型の定期的な点検メンテナンス、そして加工時の慎重な取り扱いにより、キズのリスクを最小限に抑えることができます。また、材料自体の品質管理も重要で、欠陥のある材料は使用を避けるべきです。

強度が弱い

強度不足の一因としては、不適切な加熱温度が挙げられます。材料が十分に加熱されていないと、内部構造が適切に変形せず、所望の強度が得られない可能性があります。また、急速な冷却不均一な熱処理も、材料の強度に悪影響を及ぼすことがあります。

強度を向上させるためには、加熱と冷却プロセスを制御し、材料が均一に処理されるようにすることが重要です。さらに使用する材料によって、適切な鍛造温度範囲を維持することも重要です。

欠肉や曲がり

鍛造プロセス中に発生する「欠肉」や「曲がり」は、主に不均一な加工圧力や材料の不適切な配置によって引き起こされます。

欠肉は、金属が型のすべての部分に適切に流れ込まない場合に生じます。金属の加熱温度が不十分であるか、型に対する圧力が均等でないことが原因です。一方、曲がりは、鍛造中の不均一な力の適用不平等な冷却によって生じます。

これらの問題を解決するためには、まず加熱プロセスを改善し、金属が均一に加熱されていることを確認します。

さらに、鍛造時の圧力を均等に適用し、材料が型内で均一に分散されるようにすることが重要です。また、製品が均等に冷却されるように、冷却プロセスも慎重に管理する必要があります。

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