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半自動溶接とは?溶接機の種類・仕上げのコツ・メリット&デメリットを解説

半自動溶接とは?溶接機の種類・仕上げのコツ・メリット&デメリットを解説

 

               

半自動溶接とは、製造業や工業分野において欠かせない溶接技術の一つです。溶接作業の自動化手動操作の組み合わせを特徴としており、高い生産効率と精度を実現します。

本記事では、半自動溶接の基本原理、アーク溶接との違いや、半自動溶接のコツ、メリット・デメリットについても詳しく解説していきます。ぜひ、参考にしてください。

半自動溶接とは?

半自動溶接とは、連続的にワイヤ電極を供給することにより、効率的で一貫した溶接が可能な溶接方法です。

半自動溶接は、操作者がトーチの動きを制御しつつ、溶接機器が自動的に溶接ワイヤを供給します。溶接作業の継続性と品質が向上し、特に長い溶接や大量生産においてその効率が発揮されます。

半自動溶接は主にガスシールドアーク溶接に分類され、CO2溶接やMIG/MAG溶接などが含まれます。

自動車製造、建設、造船など幅広い産業で使用されており、その多用途性と高効率が評価されている技術です。

半自動溶接の種類

半自動溶接の種類には主にCO2溶接、MAG溶接、MIG溶接とあります。それぞれの詳細について解説していきます。

CO2溶接

CO2溶接は、半自動溶接の一形態であり、その名の通り二酸化炭素(CO2)をシールドガスとして使用します。

特に厚い金属材料の溶接に適しており、強力な貫通力と高い生産効率を特徴としています。CO2を使用することで、溶接中に生成されるアークは非常に安定し、連続的なワイヤ供給によってスムーズで一貫した溶接が可能になります。

詳細は下記コンテンツもご確認ください。

■関連リンク:CO2溶接

MAG溶接

MAG溶接は、半自動溶接の一種で、主に二酸化炭素アルゴンの混合ガスを利用します。

CO2溶接と同様に連続的なワイヤ供給を特徴としますが、ガスの使用に伴い、異なる特性を持ちます。MAG溶接の最大の特徴は、溶接プロセスの安定性仕上がりの品質の高さです。

アルゴンの添加により、スパッタの量が減少し、より滑らかでクリーンな溶接面が得られるため、視覚的な外観が重要な用途に適しています。

MAG溶接は、自動車製造、機械製作、建設などの分野で広く用いられています。特に、異なる種類の金属を溶接する際に有効であり、その多用途性から多くの製造業界で重宝されています。

しかし、CO2溶接に比べて若干コストが高い点や、専門的な技術を要する点は留意する必要があります。

MIG溶接

MIG溶接は、半自動溶接の中でも特に多目的かつ汎用性の高い方法です。主に不活性ガス、例えばアルゴンヘリウムをシールドガスとして使用します。

MIG溶接は、連続的なワイヤ供給とガスの流れにより、溶接プールを外部環境から保護しながら安定した溶接を実現します。酸化や汚染のリスクが低いため、クリーンで高品質な溶接結果を求められる場面で有効です。

MIG溶接は、薄板から中厚板の溶接に適しており、自動車製造、造船、建築のほか、美術や彫刻のような精密な作業にも使用されます。

比較的使いやすく、初心者にも扱いやすいという利点がありますが、不活性ガスのコストが他の方法よりも高い点を考慮しておく必要があります。また、風などの外部環境の影響を受けやすいので、屋外での使用には適切な対策も必要です。

半自動溶接に使用する機械の特徴

半自動溶接に使用するガスシールドアーク溶接機ノンガス溶接機について解説していきます。

ガスシールドアーク溶接機

ガスシールドアーク溶接機の特徴は、溶接中にシールドガスを供給し、溶接プールを大気中の不純物から保護する機能です。供給するシールドガスは、溶接部の酸化や汚染を防ぎ、クリーンで強度の高い溶接接合部を実現します。

主に二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムなどのガスを使用し、MIG、MAG、CO2溶接などの異なる溶接プロセスに対応しています。

ガスシールドアーク溶接機は、連続的にワイヤ電極を供給する機能を有しており、溶接速度の向上と一貫した溶接品質を提供します。加えて、その設計はユーザーフレンドリーであり、溶接作業の効率化と操作の容易さを重視しています。

機器の精度と安定性から、自動車製造、建設、造船など多様な産業分野で広く採用されています。

ノンガス溶接機

ノンガス溶接機は、その名の通り、外部からのシールドガス供給を必要としない半自動溶接機の一種です。

機器の主な特徴は、自己保護型のフラックス入りワイヤを使用することです。

フラックス入ワイヤは溶接時、フラックスを熔解し溶接部を保護するガスを発生させることで、外部のガス供給なしに溶接作業を可能にします。この特性は、屋外での作業風が強い環境での溶接に特に適しており、外部環境に左右されにくい安定した溶接を実現します。

ノンガス溶接機は、携帯性と使いやすさに優れており、小規模な修理作業や時にDIY愛好家の利用もおすすめです。ガス供給の必要がないため、設置や運用が比較的簡単で、初心者でも扱いやすいという利点があります。

また、コスト効率も良好で、低コストで高品質な溶接が可能です。しかし、フラックス入りワイヤの使用は、後処理において余分なスラグの除去が必要になるという点を考慮する必要があります。

半自動溶接機を扱うには資格が必要?

半自動溶接機を操作する際、特定の資格は必須ではありませんが、適切な特別教育を受けていることが求められます。

労働安全衛生法第59条第3項に基づき、職場での溶接作業は安全衛生教育を義務付けられており、アーク溶接に関しては労働安全衛生規則が特別教育の必要性を定めています。

一方で、半自動溶接作業は資格がなくても行えるものの、専門的な資格を取得することも可能です。

溶接技能者評価試験」があり、一般社団法人日本溶接協会(WES)が実施しています。

溶接の操作ごとに分かれており、アーク溶接作業者、ガス溶接技能者、ガス溶接作業主任者、アルミニウム溶接技能者、溶接管理技術者などが含まれます。

半自動溶接5つのメリット

半自動溶接には、下記のようなメリットがあります。

  • 溶接速度が速い
  • 磁力・電気の影響を受けない
  • 微細加工できる
  • 異材接合できる
  • 電極管理が不要

それぞれ詳細を確認していきましょう。

メリット1:溶接速度が速い

半自動溶接の最大のメリットの一つは、速度の速さです。連続的にワイヤが供給されるため、溶接作業が途切れることなく、迅速かつ効率的に進行します。

長い溶接シームや大量生産が必要な場面で特に有効です。手動溶接に比べて、半自動溶接は時間を大幅に節約でき、生産性の向上に大きく貢献します。

また、工業分野や建設プロジェクトでのコスト削減にもつながります。

メリット2:磁力・電気の影響を受けない

磁力や電気の影響を受けにくいのも半自動溶接のメリットです。手動アーク溶接では、磁力によるアークブロー(アークが不安定になる現象)が問題になることがあります。

しかし、半自動溶接では、機械化されたワイヤ供給と制御された電流により、問題が大幅に軽減。結果として、溶接過程はより安定し、磁力の影響を受けることなく一貫性のある溶接が可能になります。

また、電気的な干渉に対しても強い耐性を示し、特に電子機器が多用される環境や高電圧の近くで作業する際に重要です。半自動溶接機の安定した電流供給は、電気的干渉によるアークの不安定化を防ぐのにも有効です。

メリット3:微細加工できる

微細な加工が可能であることも半自動溶接のメリットの1つです。

半自動溶接では、精密なワイヤ供給制御と高度に調節可能な熱入力を組み合わせることで、非常に細かい溶接作業ができます。薄板金属の溶接小さな部品の修理精密機械の組立てなど、細やかな作業が求められる場面で有効です。

半自動溶接機は、溶接ビードの幅や形状を精密にコントロールできるため、微妙な加工に必要な繊細さも取り入れられます。また、操作者は溶接プロセスを細かく監視し、必要に応じて随時調整を加えることができるため、緻密な溶接が可能です。

メリット4:異材接合できる

半自動溶接は、異なる種類の材料を接合する能力もメリットの1つです。

半自動溶接の正確な熱管理と、細かい溶接制御により実現します。例えば、ステンレス鋼と炭素鋼アルミニウムと銅など、通常は接合が難しいとされる異なる種類の金属を効果的に溶接することが可能です。

航空宇宙、自動車、造船などの産業において特に重要で、これらの分野では、異なる特性を持つ材料を組み合わせることで、最終製品の性能を最適化する必要があります。

半自動溶接による異材接合は、上記のような複雑な要求に応えることができ、製品の軽量化や強度の向上に寄与します。

メリット5:電極管理が不要

半自動溶接の最後のメリットとして、電極管理の手間が不要であることが挙げられます。

従来の手動アーク溶接では、電極の交換や調整が頻繁に必要ですが、半自動溶接では連続的に供給されるワイヤ電極を使用するため、この手間が削減されます。

また、電極管理が不要であることは、作業の一貫性と品質の向上にも寄与します。

半自動溶接のデメリット

半自動溶接にはメリットがある一方でデメリットも存在します。対策方法と共にに詳しく解説していきます。

デメリット1:風の影響を受けやすい

半自動溶接のデメリットの1つは、屋外での作業時に風の影響を受けやすいことです。シールドガスを吹き飛ばすことによって、溶接部の保護が不十分になる可能性があり、その結果、溶接部に空気中の不純物が混入しやすくなり、溶接の品質が低下する恐れがあります。

具体的には、酸化孔穴の発生が増加し、溶接接合部の強度や外観に影響を及ぼす可能性があります。

問題に対処するためには、風除けの設置風が弱い環境での作業が推奨されます。しかし、これらの対策は常に可能ではなく、特に大規模な建設現場や屋外の修理作業では、風の影響を避けることが難しい場合があるのも事実です。

デメリット2:価格が高い

半自動溶接機は、初期投資として、特に高品質な機器を購入する場合、その費用は手動溶接機器や単純な溶接設備に比べて高くなる傾向があります。

また、半自動溶接に必要なシールドガスや専用のワイヤなどの消耗品も、運用コストを増加させる要因となります。

しかし、長期的な視点では、半自動溶接機の高効率性と生産性の向上が、コストの削減に寄与することも考えられます。

デメリット3:溶接材料のワイヤーがサビてしまう可能性がある

半自動溶接で使用されるワイヤ材料は、サビる可能性があります。

特に、湿度が高い環境や適切な保管が行われていない場合、ワイヤがサビたり湿気を帯びる可能性があります。サビや湿気はワイヤの均一な供給を妨げ、溶接時のスパッタの増加溶接不良の原因となることがあります。

ワイヤを乾燥して清潔な環境で保管することが重要です。適切な保管方法には、防湿措置や密閉容器の使用などが含まれます。また、定期的にワイヤの状態を確認し、サビや損傷の兆候が見られた場合は早急に交換することが推奨されます。

アーク溶接との違いは?

アーク溶接との違い 半自動溶接の特徴 アーク溶接の特徴
溶接速度が速い 作業の一貫性・速度が速い 電極棒を手動で交換
清掃の手間 シールドガスで溶接部を保護 溶接後の清掃作業が必要
微細な作業が可能 熱のコントロールがより精密 広範囲に適用

半自動溶接と伝統的なアーク溶接の違いで、最も顕著なのは溶接プロセスの自動化の度合いです。

半自動溶接では、ワイヤ電極が連続的に供給されるため、作業の一貫性と速度が向上しますが、アーク溶接では手動で電極棒を操作し、頻繁に交換する必要があります。

また、半自動溶接ではシールドガスを利用して溶接部を保護し、酸化や不純物の混入を防ぐことで、より清潔で強度の高い溶接が可能となります。一方、アーク溶接では、フラックスがこの役割を果たし、しばしば溶接後の清掃作業が必要です。

加えて、半自動溶接は熱のコントロールがより精密で、微細な作業に適している点も特徴です。アーク溶接はそのシンプルさから広範囲に適用できますが、半自動溶接は特に高品質かつ効率的な溶接が求められる場面でその強みを発揮します。

半自動溶接のやり方・きれいに仕上げるコツは?

半自動溶接のやり方の手順は下記のとおりです。

手順 作業内容
①作業エリアの確保 ・安全装備を整えた、作業エリアの確保
②溶接機器の設定
(電流・電圧・ワイヤ速度の調整)
・溶接する材料の種類や厚さに応じて最適化する
③溶接 ・トーチを一定の角度と距離で持ち安定した速度で動かす
・シールドガスの流量を行う
④仕上げ ・必要に応じて、スパッタやスラグを除去

ここからは半自動溶接をきれいに仕上げるコツについて解説していきます。

電流・電圧の調整設定

半自動溶接をキレイに仕上げるコツの一つは、電流と電圧の適切な調整です。

電流の設定は、溶接する材料の厚さや種類によって異なります。一般的に、材料が厚い、また溶接速度が速い場合には、より高い電流が必要です。

電圧の調整は、アークの長さ溶接プールの形状に影響します。電圧が低すぎるとアークが不安定になり、高すぎるとスパッタが増える可能性があります。

パラメータを正しく設定することで、一貫した溶接ビードが保たれ、最終的な溶接の外観と強度が向上します。溶接作業を開始する前に、材料の種類や厚さに基づいてこれらの設定を試験し、最適化することが推奨されます。

トーチの距離は10mm開けて溶接する

半自動溶接で高品質な仕上がりを実現するためには、トーチの距離を適切に保つことも重要です。理想的なトーチと作業面の距離は約10mmで、この距離を維持することです。

トーチが作業面に近すぎると、溶接プールが過小になり、不十分な貫通や不均一なビードが生じる可能性があります。一方、トーチが遠すぎると、アークが不安定になり、スパッタが増加し、溶接部の品質が低下する恐れがあります。

距離が近すぎても、遠すぎても上手くいきません。

この約10mmの距離は、溶接プロセス中に一貫してアークが安定し、適切な熱入力と溶融の制御を可能にするための理想的なバランスを提供します。この距離を保つためには、作業者の手の動きが一貫して安定している必要があり、練習と経験が必要です。

半自動溶接に関するよくある質問Q&A

半自動溶接に関する質問を下記にまとめました。

Q.電圧が低いとパンパンと弾く音がします。どうすれば良いでしょう?

パンパンという音がする場合、まずは電圧を適切なレベルに調整する必要があります。

電圧が低すぎるとアークが不安定になり、溶接ビードが不均一でスパッタが多くなる原因となります。電圧を少しずつ上げ、安定したアークが得られるまで調整してください。

また、ワイヤの送給速度も確認し、必要に応じて調整すると良いでしょう。適切な電圧とワイヤ速度のバランスを見つけることが、スムーズな溶接作業には不可欠です。

Q.きちんと溶け込まずにダマになってしまったらどうすれば良い?

主な原因は熱入力の不足か、溶接速度が速すぎることにあります。まず、電流の設定を確認し、必要であれば増やしてみてください。

電流を増加させることで、より多くの熱が溶接部に供給され、金属が適切に溶け合うようになります。

また、溶接トーチの移動速度を遅くして、各部が十分に熱を受けるようにしてください。これらの調整で、溶接ビードの品質が改善され、滑らかな仕上がりになるはずです。

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